コムズ(Komuz / Комуз)

コムズ(Komuz)は、中央アジアのキルギス共和国を代表する伝統的な撥弦楽器である。

細長いネックと洋梨形の胴体を持つリュート属の楽器で、3本の弦を指で弾いて演奏する。

外見は中央アジアのドンブラやドゥタールなどにも似ているが、コムズにはフレットがないという特徴がある。

キルギスでは古くから親しまれており、民謡の伴奏や独奏など、さまざまな場面で使用されている。

歴史と文化

コムズはキルギスの民族音楽を象徴する楽器の一つで、古くから口承によって演奏技術や楽曲が伝えられてきた。

キルギスには、カンバルという狩人が自然の中で弦の鳴る音を聞き、それを手がかりにコムズを作ったという伝説がある。

伝統的なコムズの器楽曲は「キュー(Küü)」と呼ばれ、自然や動物、歴史的な出来事、人々の感情などを題材とした作品も多い。

また、キルギスの即興詩人・歌手である「アクン(Akyn)」の活動にも関係が深い。アクンは歌や詩を即興で表現し、コムズで伴奏することもある。

現在では独奏に加え、民族楽器の合奏やオーケストラでも使用されている。

構造

コムズは、伝統的には胴体とネックを一つの木材から削り出して製作する。

材料にはアンズやクルミ、ビャクシンなどの木材が使用されることがある。

胴体は内部が空洞になっており、その上に薄い木製の表面板を取り付ける。

写真の楽器では、表面板の中央よりやや上に小さな響孔が設けられている。

ネックにはフレットがなく、左手の指で弦を押さえる位置を変えることで音程を調節する。

ギターのように音程がフレットで固定されないため、滑らかに音程を変化させる演奏や、細かな音程の調整が可能である。

演奏方法

コムズは一般的に胴体を横向きに構え、右手の指で弦を弾いて演奏する。

指で弦を一本ずつ弾く方法のほか、複数の弦をまとめて弾くストローク奏法などが使用される。

また、演奏中に表面板を叩いて打楽器的な音を加えることもある。

コムズの演奏には技巧的なものも多く、楽器を肩に乗せたり、背中側に回したりしながら演奏するパフォーマンスも見られる。

単なる旋律演奏にとどまらず、複数の弦を同時に鳴らすことによる和音や、開放弦を利用した持続音なども特徴である。

サイズ

以下は写真の楽器の実測値である。

  • 弦長:約61cm
  • 全長:約86cm

これらは所蔵個体の寸法であり、コムズ全般の標準的なサイズを示すものではない。

調弦(チューニング)

コムズには複数の調弦方法があり、演奏する曲によって使い分けられる。

特徴的なのは、中央の弦を両端の弦より高い音に調弦することが多い点である。

代表的なものに「ボシュ・トルゴー(Bosh Tolgoo)」という調弦があり、D–A–D の音程関係となる。

このほかにも、E–A–E など複数の調弦が存在する。

調弦によって開放弦の響きや演奏しやすい音型が変化するため、曲に応じて調弦を変更することが伝統的に行われている。

以下は「ボシュ・トルゴー」の調弦例である。左から3弦~1弦を示す。

弦について

伝統的には羊などの腸から作られたガット弦が使用されていたが、現在ではナイロンなどの合成樹脂製の弦が広く用いられている。

釣り糸を弦として使用する例もある。

以下は写真の楽器に入手時に張られていた弦の実測値である。

3弦:0.55mm
2弦:0.55mm
1弦:0.57mm

いずれもナイロン製である。

3弦と2弦が同じ太さで、1弦のみわずかに太い構成となっている。ただし、この違いが意図的なものか、前所有者による弦の選択によるものかは不明である。

また、これらの数値は所蔵個体の実測値であり、コムズの一般的な標準仕様を示すものではない。

参考情報